手提げ袋の中に沢山敷き詰められたそれが、走る振動でガサガサと音を立てる。
やっぱり紙袋を予め用意しておいて正解だった…我ながら空しくもあるのだが。

本日の授業から解放され、急いで向かう先はそう、3年の教室。

彼女は知っていたのだ。
この膨大な量を上回るチョコに手を焼いている者が、この学校には少なくとも、他に2人はいると言うことを。


「オォーーーッス!!」
帰宅して行く生徒達と擦れ違いつつ、お目当ての教室に駆け込み様に叫ぶ。
と、未だ自分の席に着き、机の上を凝視していた彼らが振り返る。
「霧島」
「ネェさん」
飛び込んで来た相手の名を豪田が呼び、紫が呼んだ。
「ィヒヒ、やっぱし大収穫の模様でvvv センパイ方☆」
手近の空席に腰を下ろしつつ、茶化すように言うと…本気で困った、という顔を窺わせるのがまた笑えてしまう。

自分が貰ったものはと言えば、まぁ殆どが義理チョコ(本命では困る)…なのであって。
それと比較して見てみても彼らの机をいっぱいに埋めつくすそれらは、大きさと言い、気合いの入ったラッピングと言い、物によっては手作りもあり…いわゆる本命がズラリと並んでいる。

「…甘いものは苦手なんだが…」
一方は、自分の口には合わない消費困難な物量に眉を顰め、
「こんなに貰ったってさーあぁ…オレ困るだけだし…」
もう一方は、それに籠められている想いの重さにうな垂れていた。

「豪田ぁちゃんとビター味選んでくれてるコ多いみたいだし…んな愛想ないこと言うなっつの☆
 紫も!案外受け取ってもらえたってだけで女の子って嬉しいもんだョ。もっと喜べっちゅうの」
其々にフォローを入れてやっても、いまいち効果がないらしい。
抜本的に解決とはなっていないのだから、致し方がないか。
…ったく仕様がねぇ。
「あのさ♪ 物は相談なんだけど〜…」
恐らくは食らいついて来るであろう、エサを乗せた話を切り出した。
「なぁ、アタシの取り分も込みで、こぅ湯煎してケーキ作ろうかと思ってんだけどー…どう?」
したら、家族みんなででも分けて食えるし?…と付け加えられて、豪田の方は顔を上げた。
しかしもう1人は
「でも…そんなことしたらマズイんでね?」
流石に、自身も恋に身を焦がすだけあって。その軽そうな外見とは裏腹に、なかなか誠実なものの考え方を貫いて来る。

んー、と霧島も一呼吸置いてから、
「じゃあその分、ちゃんと一人一人にお返しするなら良いんでね?」
語尾の口調を真似てみながら、さらに策を講じてやってみると、
「………さいでスか。
紫も少し不本意ながら、納得が行った様子を返す。
こうなれば、既にネエさんのペースだ。
霧島のいつもの、得意気でいて満面の笑顔を深める。

半ば強引にそこまで事を運んで、逸早く席を立ち、急かすように続ける。
「あでも、もちろんッ手作りの二度手間は抜きね。それはちゃんと処理すること。オーライ?」
と、明るく言い放つ霧島に、豪田は溜め息にも似た笑みを零す。
「まったく…」
―――お前には参るよ。
口の中でそんなことを呟く。

去年は彼女からも…義理だから、と手渡されたそれを含めて、何とか完食したものの………
…もう思い出したくもない。

―――否、それらの思考はバッサリと断ち切られた、…彼女の一声で。


「さ、そいじゃ、豪田ン家へレッツゴーッ!」


   ━━━へ?


「ちょちょ・ちょっと待て、霧島っ!それはいか―」
「マジッスか?行くッス!行くッス!!さっすが姐さん!」
「な゛ッ、コラ紫!貴様!今日は絶対に近寄らせんと言っ―」
「え?じゃ豪田そのチョコ全部1人で食べる?」
「や、そうは言ってな―」
「だったらとっとと行く!トロイ男はダサイよ!」
「ちょッ待て霧島!話せばわか―」
「まぁまぁ義兄さん!お家行ってから将来設計についてもゆっくり話しましょ」
誰 が に い さ ん だあぁあぁーーーッッッ!!!

「あははは、やっといつもの調子に戻ってんじゃん♪」

 

 

 

この日、豪田宅が修羅場と化したのは…もはや言うまでもない…☆

 

 

 

 

 
 

…本当は続き、書きたかったのですが…―――

まぁ敢えて書かなくても想像に容易過ぎるのと、

かなり突発(5時間程度…?)で書いた本人もう煮詰まってるのと☆


期間限定で、こちらには上げないのつもりでしたが…この話かなり好きなので再アップ〜(汗)。


駄文駄絵失礼致しました★