確かに、センパイは私の手を取ってくれました。

でももう少しだけ、本当に特別な女の子なのか、自覚が欲しいんです…。

   ―――…わがまま、でしょうか…?



「……?何か言ったかぁ西野ー…?」

えっ…
「ぃ・いえー…何も…ぁはは」
…と、おどけて返すと、そっか。と気のない返事が返ってきた。
うーん、何もないのは半分ウソで、半分本当だったのに…。



今日も、花園高校野球部は、部活で休日出勤です。

熱血野球大会への参加があったため、スケジュール的に秋の予選は見合わせ、現2年の先輩方が全てを賭してるのは来年の夏の大会。


…鷲尾センパイはいつものようにロードワークに行ったり、打撃面でもクリーンナップのバッターとして貢献すべくフリーバッティングに打ち込んでたり、それから暇さえあれば後輩の指導をしていたり…。
今は一番そこに陣取ることが多いと思われる、投球練習用のスペースでピッチング。

え?
あ・えぇと…私は今、その脇にある芝生の球拾いが終わって、今度はコレをキレイに磨こーと思ってま――――ズシリ


…おッ
「ぉおーもーいぃー…☆」
「………西野ぉー?」
何やってんだ☆ という声色。一身に投げ込みながらも流石視野が広いと言うか、耳聡いと言うか…。
「…運べないんならそのまま置いといていいぞー」
「だ・だいじょーぶですぅーっ」
というワリにはやはり足がふらついてて…。
「……ドコが大丈夫だよ…無理すんなってー」
「ほ・本当で、すぅ・…あっ」
ふ、と、呆けたような声。
見上げる先は空。
辺り一面を雲に覆われた暗い空から、凍えるような寒さに張り詰められた空気の中を、ひらひらと舞い落ちるそれに、誰より先に気付いたのだ。

「ふってきたぁー…」





おおぉーーっっ!!
と、部員達は次々と、童心にかえったような声を上げる。
…もちろん、練習嫌いで有名(?)な近藤センパイも同じ。
「っしゃーっ!降ってきたぁ!もうこんな中、練習なんてやってられッかぁーーーッッ!!」
そう言うやいなや、雪にはしゃぎ回る犬のように駆け出していってしまって。
そんな元気者に注意を促すのは、キャプテンである石山さんの十八番。
「こらあー近藤ーっ!監督いないからって逃げるなーっ!」
まだ解散までは時間あるぞー!…と続けられて、西野が何かに気付いたような声を出す。
「あっでも石山せんぱいッ!天候次第では自由解散で良いって話ですよー」
…との、まさしく天の御声に、つい他の部員達からも尚の事、歓喜の声が漏れる。

石山が本当か、と問うのに、西野は答える。
「はい。今日はもうこれから降り通しって予報でしたし…風邪引かないうちに切り上げさせて良いって。
 ちょっとの雪でもグラウンドって結構滑るから、ケガとかあっても大変ですし。」
あ、私ちゃんと職員室寄って報告しておきますからー、と付け加える。

それを聞きながら石山はうーん…と暫し考え込み、まぁ確かにそうだよな、と言って部員達に振り向き直る。
「おーっし!各自、片付けと整理体操怠らずにーっ!今日は全員早めに切り上げること!以上ッ!!」
「「「「っしたぁッ!!」」」」
球児達の力強く明るい号令が、寒空に響き渡る。
西野がそれに続き、汗の始末も忘れないで下さいねーっと呼び掛ける。
皆様々に、おっけーおっけーりょーかーいーほんじゃおさきーおつかれーじゃあなーおぉまたなー…と、帰り際の決まり文句が飛び交い、早まった解放感に嬉々としていた。



…その状況で1人、最初の感歎の声に振り向き様で、ボールを受けた体勢のまま固まっている男がいた。
西野がそれに気付き、何事かと歩み寄り、本気で心配そうな顔をして覗き込む。
「……どうしたんですか…?」

「え、ぁ・や…」
自分に向けられていた言葉と視線に、漸く気付く。…先程の良く気の付くというのは訂正しておこう。
どこか、極まりのつかないような顔で、
「まだ全然練習量足りてねぇのに…ってな。」
心の裡を告げた。

そう。方や練習好きの、生真面目の塊との異名をも持つ鷲尾先輩だから。
…まぁ暫く部から離れていた経歴を持ち、空いてしまった年月を取り戻したい気持ちも祟っているのを考えれば、練習好きなのも当然と言えるか。
そんな台詞が出て来ても不思議はない。

だがそれも、
「でも…休める時に休むのも、エースには大事なお勤めですよ」
いつものニッコリ笑顔で切り返された。

「ぅ・うーん…そっか…」
…見事、言い包められた。
極まりが悪いのは変わらないが、つられて自然と顔が綻ぶ。
手持ち無沙汰となったボールをヒョイヒョイと両の手でお手玉してから、よしっ!と大きく振りかぶり。
思いっきり上半身を後方へ捻らせ、次に踏み込んだ軸足に見事に重心を乗せ。
腕は撓るムチのようにして、指先から白球が弾き出され。
ボールは遥か向こうのバッティング練習用に設置されていたフェンスに、一直線に飛び込んでいった。

全力投球の、一日の最後を締め括る一球。

「今日はッ、これで終いっ」


私、その白い軌跡を見るのが、スゴク、好きです。


さ、
「戻ろっか」
と笑い掛けつつ言い終わるより先に、さっきの重たいお荷物の取っ手に手を通して。
「…ンとに、…コレけっこ重いな」
「あっ…すみませんーっ…」


でも、それがあってちょうど歩幅が合ってたんですよ。






「……マネージャ。」

「はい?」

「…明日…ヒマある…?」






…雪が、つもりつもって、明日くらいは部活、なくなると良いなぁ…。











途中に入ってたイラストを描いてから、話が出来ました…☆
…やっぱりマネージャが野球部特許(?)のジャンバー羽織ってたり、
長袖アンダーシャツって良いよねぇ…とか言う欲望に身を任せて(爆)。

…この、ドット背景画像の使い方は我ながら気に入ってたりする。


本ッ当に今年の23日は寒かったので、こんな中でも部活頑張る男はカッコヨイよね。
でも構ってもらえない*構ってもらいたい感覚が女には芽生えても不思議はないかな、と。
女ってのは淋しがり屋なんだからvvv

そこいら辺、ちゃんとケア出来る男でいて欲しい願望(…)。
時には甘え上手で尽くし上手な、スーパー可愛い女の子なのを描写したかった欲望(死)。
恋人達のイヴ・当日の描写と想像は出来なかったし、したくなかった現状。
や、いろいろひっくるめて★<出来れば何もない方向でたのんますー…(死)

今回のテーマ*タイトルはー……まぁその、雪の日のくれた幸(ユキ)。
寒ッ☆